SSPMとは?SaaSの設定不備を自動検出するセキュリティ管理の仕組みを解説
デジタル変革が加速する中、多くの企業がSaaSを業務の中核に据えるようになりました。しかし、SaaSの利用拡大に伴い、設定ミスによる情報漏洩や不正アクセスといったセキュリティインシデントが増加しています。 複数のSaaSを個別に管理する従来の方法では、セキュリティ担当者の負担が増大し、見落としのリスクも高まります。 こうした課題を解決するソリューションとして注目されているのが、SSPM(SaaS Security Posture Management)です。本コラムでは、SSPMの基本から導入メリット、選定時の判断基準まで解説します。
目次
SSPMとは
SSPM(SaaS Security Posture Management)とは、企業が利用する複数のSaaSにおけるセキュリティ設定の不備を自動的に検出し、リスクを可視化・管理するためのセキュリティソリューションです。
各SaaSのセキュリティ設定やアクセス権限、データ共有ポリシーなどをAPI連携により継続的に監視し、設定ミスや脆弱性を発見した際には管理者へアラートを送信します。手動での確認作業を自動化することで、設定不備の見落としを防ぎ、インシデント発生前に対処できる点が大きな特徴です。
主な監視対象となるSaaSには、Microsoft 365、Salesforce、Slack、Zoom、Google Workspaceなどがあり、業務で広く使われるクラウドサービスに対応しています。
SSPMが求められる背景
SSPMへのニーズが高まっている背景には、SaaS市場の急成長と、それに伴うセキュリティリスクの増加があります。
SaaS市場の拡大
総務省のデータによると、世界のSaaS市場規模(売上高)は年々増加を続けており、2026年には3,283億ドルに達すると予測されています。
図:世界のパブリッククラウドサービス市場規模(売上高)の推移及び予測
参考:総務省「令和5年度 情報通信白書」を元に当社にて作成
設定ミスによるセキュリティインシデントの増加
業務効率化を目指してSaaSを導入する企業が増える一方、設定の誤りにより機密情報が意図せず公開されたり、不正アクセスの入口となったりする事例が報告されています。
総務省が2022年10月に公表した「クラウドサービス利用・提供における適切な設定のためのガイドライン」でも、設定不備を防ぐ対策としてSSPMやCSPMといった監視ツールの使用が推奨されています。
管理負荷の増大
企業が利用するSaaSの数は増え続けており、それぞれのサービスを個別に管理することは、セキュリティ担当者にとって現実的ではなくなっています。アクセス権限の管理、データ保護、コンプライアンス対応など、多岐にわたる業務を効率的に行うため、統合的な管理ツールへの期待が高まっています。
SSPMの主な機能
SSPMには、SaaSのセキュリティを維持するための以下の機能が備わっています。
継続的な監視とリアルタイム通知
SaaSの使用状況を常時監視し、異常な設定変更や潜在的なセキュリティリスクを即座に検出します。設定不備が発生した際には、事前に定めた基準に基づいて自動的にアラートが送信されるため、管理者は問題を早期に把握し、被害の拡大を防げます。
設定評価とリスクスコアリング
CISやNISTなどの業界標準に基づいた評価項目により、各SaaSのセキュリティ設定を自動的にチェックします。検出された問題にはリスクレベルが付与され、優先度の高いものから対応できるよう整理されます。また、具体的な修正方法も提示されるため、対応時間の短縮につながります。
ポリシー管理とコンプライアンス支援
企業が遵守すべき規制や社内ポリシーを設定し、各SaaSがそれらに準拠しているかを定期的に確認します。SOC2、ISO/IEC 27001といった国際基準への対応状況も可視化され、監査対応やコンプライアンス維持の作業を支援します。
ユーザー権限の監査
各ユーザーに付与されているアクセス権限を分析し、過剰な権限や不要なアカウントを検出します。退職者のアカウントが残っていないか、最小権限の原則が守られているかなど、アクセス管理の適正性を継続的にチェックできます。
SSPMを導入する4つのメリット
①セキュリティリスクの早期発見
設定ミスや脆弱性を自動的に検出することで、インシデントが発生する前に対策を講じられます。定期的な評価と改善案の提示により、セキュリティレベルを継続的に向上させることが可能です。
②管理業務の効率化
複数のSaaSを単一のダッシュボードで一元管理できるため、個別の管理画面を確認する手間が省けます。セキュリティ担当者の作業負荷が大幅に軽減され、より戦略的な業務に時間を割けるようになります。
③コンプライアンス対応の簡素化
SOC2、CIS Benchmarks、ISO/IEC 27001などのグローバル基準に照らし合わせた設定チェックが自動化されます。業界や地域特有のコンプライアンス要件への適合状況も把握でき、監査時の証跡提示もスムーズになります。
④インシデント対応時間の短縮
異常検知から対応までのプロセスが自動化されるため、セキュリティインシデントへの初動が早まります。相関分析機能により、関連する問題を包括的に把握し、的確な対処が可能になります。
SSPMとCSPM・CASBとの違い
SSPMと混同されやすいセキュリティソリューションとして、CSPMとCASBがあります。それぞれの違いを理解しておきましょう。
SSPMとCSPMの違い
CSPM(Cloud Security Posture Management)は、IaaSやPaaSといったクラウドインフラのセキュリティ設定を管理するソリューションです。一方、SSPMはSaaSアプリケーションに特化しています。
CSPMはAWSやAzure、Google Cloudなどのクラウドインフラの設定ミスや脆弱性を検出しますが、SSPMはMicrosoft 365やSalesforceといったSaaSアプリケーションの設定を監視します。監視対象となるクラウドサービスの種類が異なる点が主な違いです。
SSPMとCASBの違い
CASB(Cloud Access Security Broker)は、クラウドサービスとユーザーの間に位置し、リアルタイムでアクセス制御やデータ保護を行うソリューションです。ユーザーの行動を監視し、不審なアクティビティを検知することに重点を置いています。
SSPMは設定不備によるリスクを事前に防ぐことに特化しているのに対し、CASBはユーザーの利用時の挙動を事後的に監視する点で役割が異なります。両者を組み合わせることで、より包括的なSaaSセキュリティを実現できます。
SSPM導入時の選定ポイント
SSPMソリューションを選ぶ際には、以下の観点から評価することが重要です。
対応SaaSの範囲
自社で利用しているSaaSがすべて監視対象になっているか確認しましょう。特にMicrosoft 365やSalesforceなど、複数のサービスを包含する製品では、どのサービスまでカバーされているかを詳細に確認する必要があります。
例えば、Microsoft 365にはOutlook、SharePoint、Teamsなどが含まれ、それぞれに異なる設定項目があります。SSPMがどのレベルまで対応しているかを事前に把握しておくことで、導入後のギャップを防げます。
評価項目の充実度
セキュリティ評価項目が豊富であるほど、脆弱性の検出精度が高まります。アクセス制御、データ暗号化、ログ管理、多要素認証の設定など、幅広い観点から評価できるソリューションを選びましょう。
また、評価項目がSaaSの仕様変更に自動で追従するかどうかも確認ポイントです。クラウドサービスは頻繁にアップデートされるため、最新の評価基準で継続的にチェックできる仕組みが必要です。
カスタマイズ性
企業ごとにセキュリティポリシーや業務要件は異なります。自社の基準に合わせて評価項目やアラート条件を柔軟に設定できるかを確認しましょう。トライアル期間を活用し、実際の運用環境で試してみることをお勧めします。
サポート体制の充実度
導入後の運用を成功させるには、ベンダーのサポート体制が重要です。以下の点を確認しましょう。
- 24時間365日の技術サポート対応
- 定期的な脆弱性情報やセキュリティアップデート情報の提供
- 運用担当者向けのトレーニングプログラムの有無
- 日本語でのコミュニケーションが可能か
特に、日本国内にサポート拠点があるベンダーを選ぶことで、問題発生時の対応がスムーズになります。
SSPM導入前に行うべきこと
利用中のSaaSを棚卸しする
SSPM導入を成功させる第一歩は、社内で利用しているすべてのSaaSを正確に把握することです。
棚卸しの際には、IT部門が把握しているサービスだけでなく、各部門が独自に契約しているツールも洗い出す必要があります。シャドーITと呼ばれる、IT部門の管理外で利用されているサービスも見落とさないよう注意しましょう。
利用頻度、保存されているデータの種類、アクセス権限の設定状況なども合わせて整理することで、優先的に管理すべきSaaSを特定できます。
IT資産全体の可視化も重要
SaaSに限らず、企業が利用するIT資産全体を把握することは、セキュリティ対策の基盤となります。どのシステムにどのようなデータが保管されているか、何台のデバイスが使われ、どのソフトウェアがインストールされているかを知ることで、本当に守るべき資産を特定できます。
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SSPMに関するよくある質問
Q1. SSPMとCASBはどちらを導入すべきですか?
A. 目的によって異なります。設定ミスによるリスクを事前に防ぎたい場合はSSPM、ユーザーの行動を監視してリアルタイムで制御したい場合はCASBが適しています。より包括的なセキュリティを実現するには、両方を組み合わせることが理想的です。
Q2. 小規模企業でもSSPMは必要ですか?
A. 利用するSaaSの数や保管するデータの重要度によります。少数のSaaSしか使っていない場合は手動管理でも対応可能ですが、複数のサービスを利用し始めたら、早めにSSPMの導入を検討することをお勧めします。
Q3. SSPMの導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 製品や企業規模により異なりますが、一般的には数週間から数ヶ月程度です。API連携の設定や初期評価の実施、運用ルールの策定などが必要になります。
Q4. SSPMで全てのセキュリティリスクに対応できますか?
A. SSPMはSaaSの設定に関するリスクに特化したソリューションです。マルウェア対策やエンドポイント保護など、他のセキュリティ対策と組み合わせて使用することで、より強固なセキュリティ体制を構築できます。
まとめ
SaaS利用の拡大に伴い、設定管理の重要性はますます高まっています。SSPMは、複雑化するSaaS環境において、企業の情報資産を守るための有力なソリューションです。
まずは自社で利用しているSaaSを正確に把握し、どのようなリスクが潜んでいるかを確認することから始めましょう。適切なSSPMを導入することで、セキュリティレベルの向上と管理業務の効率化を同時に実現できます。


