サイバー攻撃の影響とは|経営リスクと被害額

サイバー攻撃の影響とは|経営リスクと被害額
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サイバー攻撃の被害報道は身近になりました。警察庁の統計では、2025年の国内ランサムウェア被害件数は226件と高止まりし、中小企業の被害は前年比37%増です。サイバー攻撃の影響は金銭損失だけでなく、取引先や顧客、従業員、さらには企業の信用・株価にまで広く波及します。本記事では、経営への影響を最新の被害額データや国内事例とともに整理し、情報システム担当者や経営層が今すぐ取り組める具体的な対策を解説します。

(参考:警察庁 令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について

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目次

サイバー攻撃が経営に及ぼす5つの影響

IPA(情報処理推進機構)の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」は、情報セキュリティ対策を怠った企業が被る不利益として「金銭の損失」「顧客の喪失」「事業の停止」「従業員への影響」の4点を挙げています。これに加え近年は、ブランド価値や株価への影響も重要な論点です。5つの切り口で整理します。

①金銭の損失

不正送金やクレジットカード不正利用などの直接的損失、基幹システム停止による機会損失、調査・復旧費用、損害賠償費用があります。とくにフォレンジック調査(ログ解析で攻撃経路や被害範囲を特定する調査)は被害台数に応じて費用が積み上がります。

②顧客・取引先の喪失

情報漏えい事故を起こすと社会的評価が低下し、顧客や取引先の離反を招きます。経済産業省とIPAの2024年度実態調査では、過去3年間にサイバー攻撃被害に遭った中小企業の約7割で、取引先にも影響が及んだと報告されました。被害が取引関係を通じて連鎖する「サイバードミノ」と呼ばれる現象です。

③事業の停止

ECサイトや工場の生産制御、基幹システムが停止すれば、売上減少のほか、納期遅延による契約解除や損害賠償請求へ発展することがあります。経理処理が止まれば有価証券報告書の提出延期につながり、投資家・株主の信頼にも影響します。

④従業員への影響

インシデント(セキュリティ事故)では従業員の個人情報が流出するリスクに加え、対応業務で長時間労働が常態化し現場が疲弊します。企業イメージの低下から離職が進んだり、従業員から訴訟を起こされたりする可能性もあります。

⑤ブランド価値・株価への影響

上場企業ではインシデント公表後に株価が下落したり、格付けが見直されたりするケースがあります。ブランド毀損は直接の金銭損失より長期にわたって業績を圧迫することが知られ、回復には広報活動や再発防止策の公表など多面的な取り組みが必要です。


(参考:IPA 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン

サイバー攻撃被害額の平均はどのくらいか

公的機関と業界団体の最新調査から、サイバー攻撃被害額の平均を整理します。調査ごとに対象や集計範囲が異なるため数値にばらつきはありますが、規模感の参考にしてください。

警察庁:1,000万円以上の費用が半数に

警察庁の2025年(令和7年)調査では、ランサムウェア被害に関連した調査・復旧費用が1,000万円以上の企業が50%に達し、前年の37%から大きく増えました。侵入経路はVPN機器の脆弱性(55%)とリモートデスクトップ(31%)が大半です。攻撃者はこれら遠隔アクセス経路の初期パスワードや未修正の脆弱性を突いて社内ネットワークへ侵入し、権限を奪取したうえでデータを暗号化するという流れが典型的な手口となっています。

図.ランサムウェア被害に関連した調査・復旧費用の総額

ランサムウェア被害に関連した調査・復旧費用の総額

警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」

(出典:警察庁 令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について

JNSA:ランサムウェア被害組織の平均は2,386万円

日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)のインシデント損害額調査レポートでは、ランサムウェア被害組織の平均被害額は2,386万円、情報漏えい被害はクレジットカード情報を含む場合で平均3,843万円と報告されています。これらの金額には事故対応費用、機会損失、損害賠償金などが含まれますが、被害組織が損害の全体像を把握できていないケースも多く、実態はさらに大きな金額になると推定されます。中小企業でも1件で数百万円〜数千万円規模の損害が生じており、「自社は標的にならない」という前提は通用しません。

(出典:JNSA インシデント損害額調査レポート 第2版

IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」の要点

IPAが公表する「情報セキュリティ10大脅威 2026」(組織向け)では、1位「ランサム攻撃による被害」、2位「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」が4年連続で上位を占めました。さらに2026年版では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初選出で3位にランクインしています。生成AIを悪用した自然な日本語のフィッシングメールや、従業員が業務情報をAIへ入力することによる意図しない情報漏えいなど、新たなリスクへの注意が必要です。

(参考:IPA 情報セキュリティ10大脅威 2026

サイバー攻撃の影響を抑える対策チェックリスト

被害を抑えるには、侵入から検知・封じ込めまでの時間を短くすることが要点です。経済産業省「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」、IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」、NIST CSF 2.0(米国国立標準技術研究所のサイバーセキュリティフレームワーク)をもとに整理しました。

経営・組織体制の整備

サイバーセキュリティは情報システム部門だけの課題ではなく、経営課題として扱うことが求められます。CISO(最高情報セキュリティ責任者)の任命や、自社リスクの棚卸しから始めましょう。NIST CSF 2.0でも「GOVERN(統治)」が中核機能に加わり、経営ガバナンスの重要性が示されています。

技術的な多層防御

侵入・拡散・持ち出しのどの段階でも検知・阻止できる体制が必要です。以下の5点を優先的に実施するとよいでしょう。

  • VPN機器・サーバ・ソフトウェアの脆弱性パッチを適時適用する
  • 多要素認証(パスワード以外の追加要素で本人確認する仕組み)を管理者アカウントに適用する
  • リモートデスクトップやVPNの設定を見直し、初期パスワードや不要な公開を排除する
  • ウイルス対策ソフトに加え、EDR(端末の挙動を監視し不審な動作を検知・封じ込めるツール)を導入する
  • バックアップは3-2-1ルール(3つの複製、2種類の媒体、1つはオフライン保管)で運用する

インシデント対応・サプライチェーン対策

攻撃を受けた後の備えも被害規模を左右します。インシデント対応手順書の整備、連絡先リストの最新化、復旧訓練の定期実施を進めましょう。サイバーレジリエンス(攻撃を受けても業務を継続・早期復旧できる力)を事業継続計画(BCP)に組み込むことが近年の主流です。取引先や委託先のセキュリティ水準も自社のリスクに直結します。

早期検知・自動対応が被害抑制のカギ

警察庁のデータでは、ランサムウェア被害を受けた組織の約8割が「バックアップから被害前の水準まで復元できなかった」と回答しています。攻撃者がバックアップ自体を暗号化するケースも多く、バックアップだけでは被害を抑えきれません。そこで重要性が増しているのがEDRです。従来型のウイルス対策ソフトがパターンファイル(既知ウイルスの特徴データ)で検知するのに対し、EDRはプロセスの振る舞いから未知の脅威も捕捉できます。

ALSOKでは、1台から導入できる「ALSOK EDRサービス」を提供しています。AIによる脅威検知から隔離・ロールバック(攻撃前の状態への自動復旧)までを自動化し、24時間365日のサポートも受けられます。SOC(24時間体制でセキュリティイベントを監視する組織)を持たない企業でも導入しやすい構成です。

(参考:経済産業省 サイバーセキュリティ経営ガイドライン

よくある質問(Q&A)

Q1. サイバー攻撃の被害額の平均はどのくらいですか?

JNSAの調査では、ランサムウェア被害組織の平均被害額は2,386万円でした。また警察庁の2025年調査では、調査・復旧費用が1,000万円以上の企業が50%に達しております。中小企業でも1件で数百万円〜数千万円規模の損害が生じるケースが多くなっています。

Q2. 中小企業でもサイバー攻撃の標的になりますか?

標的になります。警察庁の2025年調査では、ランサムウェア被害件数のうち中小企業が約64%を占めています。中小企業を経由して取引先の大企業へ被害が及ぶサプライチェーン攻撃も増えています。

Q3. サイバー攻撃の影響を抑えるためにまず何から始めるべきですか?

自社の情報資産とリスクの棚卸しから始めることをおすすめします。そのうえで、脆弱性パッチの適用、管理者アカウントへの多要素認証、3-2-1ルールに基づくバックアップ、EDRによる端末監視、インシデント対応手順書の整備を優先的に進めましょう。

Q4. EDRとウイルス対策ソフトは何が違いますか?

ウイルス対策ソフトは既知ウイルスのパターンファイルと照合して検知するのが基本です。一方EDRは、端末上のプロセスや通信の振る舞いを監視し、未知の脅威も捕捉します。検知後の隔離や復旧を自動化できる製品もあり、両者を組み合わせて多層防御を構成することが一般的です。

まとめ

サイバー攻撃の影響は、金銭損失、顧客・取引先の喪失、事業の停止、従業員への影響、ブランド価値・株価への影響と多岐にわたります。警察庁やJNSAの調査が示すように、サイバー攻撃の被害額は数千万円規模に達することも多く、調査・復旧費用も年々高額化しています。影響を抑えるには、自社のリスクを棚卸しし、脆弱性パッチ適用、多要素認証、バックアップの3-2-1ルール、EDRによる早期検知、インシデント対応手順書の整備といった基本を押さえることから始めましょう。

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