ひとり情シスとは?抱える課題と実践的な解決策

ひとり情シスとは?課題と解決方法
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現代の企業経営において、情報システムは事業の成否を分ける重要な要素です。しかし、多くの中小企業では一人の担当者、いわゆる「ひとり情シス」がIT部門を一手に引き受ける状況が少なくありません。この体制には効率的なリソース活用という利点がある一方、さまざまなリスクも潜んでいます。経営層が状況を正しく認識し、適切な支援策を講じることが問題解決の糸口となります。

本記事では、ひとり情シスが直面する特有の課題と、経営層が理解し実行すべき対応策について解説します。

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目次

ひとり情シスとは

ひとり情シス、ゼロ情シスの現状

「ひとり情シス」とは、一人で企業の情報システム部門全体を担当する状態を指す言葉です。本来、情報システム部門は複数の専門家がチームで業務を分担しますが、ひとり情シスでは、これらをすべて一人でこなします。関連する用語として「ゼロ情シス」もあり、こちらは情報システム担当者がまったく存在せず、他部門の社員が兼務している状態を意味します。また、中規模以上の企業でも、業務量に見合わない少人数で運営される「人員不足の情シス部門」が存在し、ひとり情シスと類似した問題を抱えています。

担当する業務は多岐にわたります。社内ネットワークの構築・運用、ハードウェアとソフトウェアの選定・導入・保守、セキュリティ対策、社内ヘルプデスク、IT戦略の策定と実行などが含まれます。さらに、クラウドサービスの導入管理やデジタル化(DX)の推進といった、最新のIT動向への対応も求められます。
ひとり情シスは、これら多様な業務を限られた時間と予算で遂行し、企業のIT環境を維持する重要な役割を果たしています。

ひとり情シスが生まれる背景

ひとり情シスが生まれる背景には、複数の社会的・経済的要因が絡み合っています。

クラウドサービスの普及

総務省の「令和6年通信利用動向調査」によると、クラウドサービス利用率は年々上昇しています。クラウド化により、専門的なIT部門を持たない企業でも、サーバーの維持管理なしにIT環境を構築できるようになりました。この手軽さが、一人の担当者でIT管理を任せる動きを後押ししています。

クラウドサービスの利用状況
出典:総務省「令和6年通信利用動向調査」

中小企業のデジタル化ニーズ

クラウドサービスの進化により、中小企業もITシステムを容易に導入できるようになりました。しかし、予算の制約から、十分な管理人員を確保できないケースが目立ちます。

IT人材不足とコスト高

経済産業省の「IT人材需給に関する調査」では、IT人材不足が続いていることが示されています。この状況により、企業は限られた人材でIT業務を回す必要に迫られ、ひとり情シスのニーズが高まっています。また、IT人材の獲得競争が激化し、専門知識を持つ人材の採用・維持にかかるコストも上昇しています。

リモートワークの広がり

2020年以降のパンデミックを機に、リモートワークが急速に浸透しました。この変化により、柔軟なIT対応の重要性が増し、小規模な組織でもIT環境整備が必須となりました。これが、ひとり情シスの需要拡大につながったと考えられます。

ひとり情シスが抱える課題

業務範囲の広さと専門性の両立

ひとり情シスには、ネットワーク、セキュリティ、データベース、アプリケーション管理など、幅広い分野の知識が必要です。同時に、それぞれの分野で深い専門性も要求されるため、知識の広さと深さを両立することが大きな負担になります。加えて、IT業界は技術革新や法規制の変更が速く、常に最新情報を習得し実務に反映させる必要があります。この継続的な学習負荷は、時間的にも精神的にも大きな重圧となります。

時間管理の困難さ

日々の運用業務(システム監視、ヘルプデスク、トラブル対応)と、中長期的な戦略立案や新規プロジェクトの企画を両立させることは容易ではありません。特に、突発的なシステム障害やセキュリティ対応が発生すると、予定していた業務が後回しになりがちです。また、多数の業務を同時並行で進めるため、常に優先順位の判断と効率的なスケジュール管理が求められます。結果として、長時間労働に陥るリスクが高まります。

ワークライフバランスの悪化

ITシステムは企業活動の基盤であり、24時間365日の安定稼働が必要です。そのため、深夜や休日のトラブル対応や定期メンテナンスが避けられません。システム更新やセキュリティパッチ適用など、業務時間外に実施する作業も多く、休暇取得が困難になります。この不規則な勤務は私生活との両立を難しくし、長期的には健康リスクも高めます。

孤立と精神的プレッシャー

技術的な相談や意見交換ができる同僚がいないため、問題解決や意思決定を常に一人で行わなければなりません。この孤独な環境は、専門的判断の際の不安や、自身の決定に対する自信喪失につながりやすくなります。また、システム障害やセキュリティインシデントなど、企業に重大な影響を及ぼす可能性のある事態に一人で対処する責任は、大きな精神的負担となります。

事業継続性のリスク

ひとり情シスが病気や事故で長期不在になった場合、あるいは突然退職した場合、IT関連業務の継続性に深刻な問題が生じます。特に、システム構成や運用手順、トラブル対応のノウハウが文書化されていないと、代替要員への引き継ぎが極めて困難になります。これは企業の事業継続性に直結する重大なリスクです。

セキュリティリスク

ひとり情シスの環境では、セキュリティ対策のチェック機能が不足しがちです。複数の目で確認するプロセスがないため、設定ミスや対策漏れが発生するリスクが増大します。また、日々進化するサイバー脅威に対して、常に最新の対策を適用することも困難です。さらに、セキュリティインシデント発生時には、調査・分析・対応・復旧までのすべてを一人で担当することになり、迅速かつ適切な対応が難しくなる可能性があります。

ひとり情シス負担軽減のための対策

以下の対策を適切に組み合わせることで、ひとり情シスは戦略的業務に時間を割けるようになり、組織全体のIT効率と安全性が向上します。技術活用と人材育成を両輪として進めることで、限られたリソースでも効果的なIT運用体制を構築できます。

クラウドサービスの活用

IaaS、PaaS、SaaSを適切に選択し、オンプレミスのインフラ管理負担を軽減します。セキュリティやバックアップなどの基本機能をクラウドベンダーに任せることで、運用負荷を削減できます。また、スケーラビリティと柔軟性を確保し、急な需要変化にも対応可能になります。

セキュリティ対策のアウトソーシング

セキュリティ対策のアウトソーシングは、高度化・複雑化するサイバー脅威への有効な対抗手段です。マネージドセキュリティサービス(MSS)を利用すれば、専門家による24時間365日の監視体制を確保できます。最新の脅威情報や対策アドバイスも得られるため、セキュリティ対策の質を高めつつ、ひとり情シスの負担を大幅に軽減できます。限られたリソースでも高水準のセキュリティ体制を維持することが可能です。

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AIの活用

AIとの連携により、日常的なIT運用とサポート業務を大幅に効率化できます。AIチャットボットを導入すれば、24時間体制の一次サポートが実現し、よくある問い合わせや基本的なトラブルシューティングを自動化できます。さらに、予測分析ツールを活用することで、システムの異常を事前に検知し、潜在的な問題に先手を打てます。これらのAI技術により、ひとり情シスの業務負荷を軽減しつつ、サポート品質の向上とシステム安定性の確保を両立できます。

社員教育とITリテラシの向上

社員向けの教育プログラム実施は、組織全体のITリテラシとセキュリティ意識を高める重要な取り組みです。IT利用ガイドラインの作成と教育を通じて、社員一人ひとりの基本的なIT能力を向上させれば、ヘルプデスクへの問い合わせを減らせます。また、定期的なセキュリティ意識向上トレーニングにより、人的要因によるセキュリティインシデントのリスクを低減できます。継続的な教育とフィードバック収集により、組織全体のIT活用レベルを段階的に向上させることができ、結果としてひとり情シスの負担軽減につながります。

IT部門の適切な評価

IT部門の貢献を適切に評価し、相応の報酬や昇進機会を提供することで、モチベーションの維持と人材定着を図ります。

システム管理者感謝の日

システム管理者感謝の日は、ひとり情シスを含むシステム管理者の重要性を認識し、その労をねぎらう特別な日です。毎年7月の最終金曜日に設定されており、2000年にアメリカで始まった後、世界中に広がりました。
この日の目的は、普段は目立たずに縁の下の力持ちとして働くシステム管理者の存在と貢献を可視化することです。多くの企業では、日々のIT運用やトラブル対応、セキュリティ管理などを少人数または一人で担当していますが、その重要性が見過ごされがちです。
この日を活用することで、ひとり情シスの存在価値や日々の努力を組織全体に伝える良い機会となります。また、経営層にとっても、情報システム部門の重要性を再認識し、必要なサポートや資源を提供するきっかけとなるでしょう。

経営層の理解が成功の鍵

ひとり情シスの課題解決において、最も重要なのは経営層の理解です。この理解が基盤となり、情報システム部門の効果的な運営が可能になります。
経営層が情報システムの重要性を認識することで、適切な予算や人材の配分が実現しやすくなります。また、全社的なセキュリティ意識の向上にもつながり、リスク管理の観点からも大きな意味を持ちます。
さらに、IT戦略を経営戦略と整合させることができ、ビジネス成長に直接貢献することが可能になります。経営層の支持があれば、他部門との協力も得やすくなり、業務効率の向上につながります。
中長期的な視点からのIT投資や計画立案も、経営層の理解があってこそ実現できます。また、ひとり情シスに適切な権限が与えられることで、必要な施策を迅速に実行できるようになります。
このように、経営層の理解は単なる承認以上の意味を持ちます。それは、ひとり情シスが限られたリソースで最大の成果を発揮するための重要な要素であり、組織全体のIT戦略とセキュリティ対策の成功に不可欠な基盤となるのです。

経営者向けのサイバーセキュリティガイドラインとして、経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」がありますので、ぜひ参考にしてください。
参考:経済産業省 サイバーセキュリティ経営ガイドライン

ヘルプデスクのアウトソーシング

中小企業のIT部門で特に時間がかかる業務が社内ヘルプデスクです。
ALSOKでは、IT関連のトラブルに24時間365日警備員が駆け付け、専門部署との遠隔サポートで解決する「ALSOK ITレスキュー」でひとり情シスの負担を軽減するサービスを提供しています。

よくある質問(Q&A)

Q1. ひとり情シスとゼロ情シスの違いは何ですか?

ひとり情シスは一人の担当者がIT部門を担当している状態で、ゼロ情シスは専任のIT担当者がまったくおらず、他部門の社員が兼務している状態を指します。どちらも人員不足という点では共通していますが、専門性の有無が異なります。

Q2. ひとり情シスの状態を放置するとどんなリスクがありますか?

主なリスクとして、セキュリティ対策の不備、システム障害への対応遅れ、業務の属人化による引き継ぎ困難、担当者の離職による業務停止などが挙げられます。特に事業継続性への影響は深刻です。

Q3. 小規模企業でもひとり情シスの改善は可能ですか?

はい、可能です。クラウドサービスの活用、アウトソーシングの導入、AIツールの利用など、予算に応じた対策があります。まずは業務の優先順位を整理し、外部委託できる部分から着手することをお勧めします。

Q4. ひとり情シスの負担軽減に最も効果的な対策は何ですか?

最も効果的なのは、経営層の理解を得て適切な予算と権限を確保することです。その上で、日常業務をクラウドやアウトソーシングで効率化し、戦略的業務に集中できる環境を整えることが重要です。

Q5. システム管理者感謝の日にはどのような取り組みをすべきですか?

経営層から情シス担当者への感謝のメッセージ、社内での功績紹介、業務改善のための予算確保などが考えられます。形式的なものではなく、実質的な支援につながる取り組みが望ましいでしょう。

まとめ

「ひとり情シス」は、多くの中小企業が直面する課題です。限られたリソースで企業のIT基盤を支える重要な役割ですが、その課題解決には経営層の理解が最も重要です。経営者がIT投資の必要性を認識し、適切な予算と人材確保に努めることで、ひとり情シスの負担を軽減できます。
また、業務の一部をアウトソーシングすることも効果的です。クラウドサービスの活用やIT保守の外部委託により、ひとり情シスは戦略的な業務に注力できます。
さらに、組織全体で情シス部門の業務を理解し、感謝することが大切です。日々のシステム運用や障害対応、セキュリティ管理など、目に見えにくい業務も多いため、その価値を正当に評価し、適切なサポートを提供することが求められます。

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