AI TRiSMとは?AIユーザーが知っておくべきリスク対策

AI TRiSMとは?AIユーザーが知っておくべきリスク対策
2025.09.16

最近、ChatGPTなどのAIツールを使う機会が増えた方も多いのではないでしょうか。AIは私たちの生活や仕事を便利にしてくれる一方で、「本当に安全なの?」「個人情報は大丈夫?」といった不安を感じることもあるかもしれません。

そんな中で注目されているのが「AI TRiSM(エーアイトリズム)」という考え方です。この記事では、AI TRiSMとは何か、なぜ大切なのか、私たちが気をつけるべき点について、専門用語をできるだけ使わずにわかりやすく説明します。

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目次

AI TRiSMとは

AI TRiSM(エーアイトリズム)は、「AI Trust, Risk and Security Management」の略語です。日本語で表現すると「AI の信頼性・リスク・セキュリティ管理」といった意味になります。

簡単に言えば、「AIを安全に、そして信頼できる形で使うための仕組み」のことです。これは世界的に有名な調査会社であるGartner(ガートナー)が2022年に提唱した考え方で、企業や組織がAIを導入する際の指針として使われています。

例えるなら、自動車を運転する際に交通ルールや安全装置が必要なのと同じように、AIを使う時にも守るべきルールや安全対策が必要だということです。AI TRiSMは、そのためのガイドラインのような役割を果たしています。

なぜAI TRiSMが必要になったのか

AIの普及で見えてきた問題

ここ数年でAI技術は急速に進歩し、多くの人が日常的に使うようになりました。しかし、便利になった反面、これまでになかった新しい問題も見つかってきました。

例えば、AIが「なぜその答えを出したのか」がわからないことがあります。人間なら理由を聞けば説明してくれますが、AIの場合、複雑な計算の結果として答えを出すため、その過程がブラックボックスになってしまうのです。

また、AIは大量のデータを学習して賢くなりますが、そのデータに偏った情報が含まれていると、AIの判断も偏ってしまう可能性があります。さらに、個人情報がAIによって不適切に使われる心配もあります。

企業でのAI活用が増加

Gartnerの調査によると、経営幹部の80%が自動化はあらゆるビジネス上の意思決定に適用できると考えています。つまり、多くの会社がAIを業務に取り入れようとしているのです。

しかし、適切な管理なしにAIを導入すると、思わぬトラブルが発生する可能性があります。そこで、安全にAIを活用するための枠組みとしてAI TRiSMが注目されるようになりました。

AI TRiSMの4つのポイント

AI TRiSMは、4つの重要な要素から構成されています。それぞれについて、身近な例を交えながら説明します。

1. 説明可能性(Explainability)- 「なぜそうなったの?」がわかること

説明可能性とは、AIがどのような理由でその結果を出したのかを、人間が理解できる形で説明できることです。

例えば、銀行でローンの審査をAIが行う場合を考えてみましょう。AIが「この人にはお金を貸せません」と判断したとき、「なぜダメなのか」の理由がわからなければ、お客様は納得できませんし、銀行側も適切な対応ができません。

説明可能性があると、AIの判断に間違いがあった場合にも原因を見つけやすくなり、改善につなげることができます。また、利用者もAIの判断を信頼しやすくなります。

2. モデル運用管理(ModelOps)- AIを適切に管理し続けること

AIは一度作ったら終わりではありません。時間が経つにつれて、周りの環境が変わったり、新しいデータが増えたりして、AIの性能が変化することがあります。

例えば、商品の売上を予測するAIを考えてみましょう。コロナ禍のような大きな社会変化が起きると、過去のデータだけでは正確な予測ができなくなる可能性があります。

モデル運用管理では、AIの性能を定期的にチェックし、必要に応じて改善や更新を行います。これにより、AIが常に適切に動作するよう管理します。

3. アプリケーションセキュリティ - AIを悪用から守ること

AIシステムも、一般的なコンピューターシステムと同様に、悪意のある攻撃から守る必要があります。しかし、AI特有の脅威もあります。

例えば、画像認識AIに対して、人間の目にはほとんどわからない微細な変更を加えることで、AIに間違った判断をさせる「敵対的攻撃」という手法があります。自動運転車の標識認識システムがこのような攻撃を受けると、重大な事故につながる可能性があります。

アプリケーションセキュリティでは、このようなAI特有の脅威から システムを守るための対策を講じます。

4. プライバシー保護 - 個人情報を適切に扱うこと

AIは大量のデータを学習に使用するため、個人情報の取り扱いには特に注意が必要です。

例えば、病院でAIを使って病気の診断を支援する場合、患者さんの医療情報を学習データとして使います。しかし、この情報が不適切に扱われると、プライバシーの侵害につながる可能性があります。

プライバシー保護では、個人を特定できないように情報を加工したり、必要最小限のデータのみを使用したりして、個人のプライバシーを守りながらAIを活用する方法を考えます。

一般ユーザーが気をつけるべき点

AI TRiSMは主に企業や組織向けの考え方ですが、一般の利用者である私たちも注意すべき点があります。

1. AIの限界を理解する

AIは万能ではありません。間違った判断をすることもありますし、学習したデータに偏りがある場合は、その偏りを反映した結果を出すこともあります。AIの回答や判断を鵜呑みにせず、「本当にこれで正しいのかな?」と一度立ち止まって考える習慣をつけることが大切です。

特に重要な決定を行う際は、AIの結果だけに頼らず、複数の情報源を参考にしたり、専門家の意見を聞いたりすることをお勧めします。

2. 個人情報の入力に注意する

ChatGPTなどの生成AIを使う際、つい詳細な個人情報を入力してしまうことがあります。しかし、入力した情報がどのように使われるかわからない場合があります。

氏名、住所、電話番号などの重要な個人情報は、必要性をよく考えてから入力するようにし、かつ、クレジットカード番号やシステムのアカウント、パスワードは入力しないようにしましょう。また、会社の機密情報や他人のプライベートな情報を入力することも避けるべきです。

3. 情報の出所を確認する

AIが提供する情報が正確かどうか、必ず確認することが重要です。特にニュースや専門的な内容については、信頼できる情報源で事実確認を行う習慣をつけましょう。

AIは時として、存在しない情報を「作り出してしまう」ことがあります(これを「ハルシネーション」と呼びます)。このため、重要な情報については必ず裏取りを行うことが大切です。

4. 依存しすぎないようにする

AIツールは便利ですが、依存しすぎると自分で考える力が衰える可能性があります。AIを補助的なツールとして活用し、最終的な判断は自分で行うという姿勢を保つことが重要です。

特に学習や仕事において、AIに全てを任せるのではなく、自分の知識やスキルを向上させる努力を続けることが大切です。

AI TRiSMがもたらすメリット

利用者にとってのメリット

AI TRiSMが適切に実装されることで、私たち利用者にも多くのメリットがあります。

AIの判断過程が透明になることで、なぜその結果になったのかを理解でき、AIをより安心して使えるようになります。また、セキュリティ対策が強化されることで、個人情報の漏洩リスクが減り、プライバシーが守られます。

社会全体へのメリット

社会全体で見ると、AI TRiSMの普及により、AIが原因となる事故や問題を減らすことができます。これにより、AIに対する社会の信頼が高まり、より多くの分野でAIの恩恵を受けることが可能になります。

例えば、医療分野でのAI活用が進めば、より正確な診断や治療法の提案が可能になるかもしれません。交通分野では、より安全な自動運転技術の実現につながる可能性があります。

EUのAI法

世界各国でAIに関する法律や規制の整備が進んでいます。欧州連合(EU)では「AI法」が制定され、AIの使用に関する厳格なルールが設けられました。日本でも、AI活用に関するガイドラインの策定が進んでいます。

これらの規制により、企業はより一層AI TRiSMの考え方を重視するようになると予想されます。

まとめ

AI TRiSMは、AIを安全で信頼できる形で活用するための包括的な考え方です。説明可能性、モデル運用管理、アプリケーションセキュリティ、プライバシー保護の4つの要素を通じて、AIのリスクを管理しながらその恩恵を最大化することを目指しています。

私たち一般利用者にとっても、AI TRiSMの考え方を理解することは重要です。AIの限界を理解し、個人情報の取り扱いに注意し、情報の正確性を確認し、過度に依存しないという基本的な姿勢を持つことで、AIをより安全に活用できるようになります。

AI技術は今後もさらに発展し、私たちの生活により深く関わってくるでしょう。その時に、AI TRiSMのような安全な活用方法を知っていることが、私たちにとって大きなメリットとなるはずです。

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