USBメモリ紛失のリスクと対策|記録メディア管理の重要性
JIPDECが公表した「企業IT利活用動向調査2025」結果分析(https://www.jipdec.or.jp/library/it-resarch/sqau090000001sm9.html)によると、過去1年に経験したセキュリティインシデントで最も多かったのは「従業員によるデータや情報機器(PC、タブレット、スマホ、USBメモリなどの記録媒体)の紛失・盗難」でした。
USBメモリは小型軽量でデータの持ち運びが簡単なため、ビジネスや日常生活で広く使われています。ポケットやバッグに入れて手軽に持ち運べ、複数のデバイス間でのデータ転送も迅速に行えます。プレゼンテーション資料、エクセルファイル、写真、音楽ファイルなど、多様なデータ保存に活用されています。しかし、その便利さの裏には情報漏洩やウイルス感染といったリスクが潜んでいます。本記事では、USBメモリをはじめとする記録メディアの危険性と管理の重要性について解説します。記録メディアの安全な取り扱い方法を理解し、業務への影響を最小限に抑える対策を身につけましょう。
目次
USBメモリ紛失が引き起こすリスク
USBメモリは利便性が高い反面、多くのリスクを抱えています。小型で持ち運びやすいため、気づかないうちに紛失したり、盗難に遭ったりする可能性があります。また、ウイルスやマルウェアの感染経路にもなります。これらのリスクについて詳しく説明します。
紛失・盗難による情報漏洩
USBメモリは小型かつ軽量でデータを持ち運ぶ手段として便利なため、ビジネスや個人利用で多くの人に使われています。しかし、そのコンパクトさゆえに、どこかに置き忘れたり、盗まれたりするリスクがあります。
紛失や盗難が発生すると、データが外部に流出する危険性があります。USBメモリに個人情報が保存されていて個人の権利権益を害する恐れがある場合には、個人情報保護委員会への報告義務が発生します。
以下の4つに該当する場合、「個人の権利利益を害するおそれがある事態」となります。
・要配慮個人情報が含まれる
・財産的被害が生じるおそれがある
・不正の目的をもって行われた漏洩等である
・1,000人を超える漏洩等である
報告義務が発生した場合、個人情報保護委員会に3~5日以内に「速報」を、その後30日以内(不正の目的がある場合は60日以内)に「確報」を提出する必要があります。提出しない場合は勧告・命令が出され、従わない場合は懲役刑や罰金が科されます。
USBメモリにクラウドストレージやサーバへのアクセスに必要なパスワードや認証情報が保存されている場合、被害はさらに甚大です。悪意のある第三者がこれらの情報を入手すると、企業の機密情報が侵害される可能性が高まります。さらに、情報漏洩により企業の信用失墜にもつながります。
ウイルス感染のリスク
USBメモリは便利なツールですが、ウイルス感染のリスクも潜んでいます。USBメモリを介してPC間で感染が広がる流れは以下の通りです。
・ウイルス感染済みのPCにUSBメモリを接続
・感染済みPCからUSBメモリにウイルスがコピーされる
・USBメモリに書類等のファイルをコピー
・書類のコピー先である別のPCにUSBメモリを接続
・自動再生機能によりウイルスがPCにコピーまたはウイルスファイルが実行され、感染拡大
自動再生機能はUSBメモリ接続時にファイルを自動的に開くため、USBメモリにウイルスが含まれている場合、ユーザーが気づかないうちにウイルスに感染するリスクがあります。セキュリティ上、自動再生機能は事前にOFFにしておくことを推奨します。
Windows10の場合:「設定」>「デバイス」>「自動再生」を選び、「すべてのメディアとデバイスで自動再生を使う」をオフにしてください。
Windows11の場合:「スタートメニュー」>「設定」>「Bluetoothとデバイス」>「自動再生」を選び、「すべてのメディアとデバイスで自動再生を使う」をオフにしてください。

ウイルス感染は様々な悪影響を及ぼします。システムが正常に動作しなくなったり、重要なデータが破損したりすることがあります。さらに、個人情報や機密情報が漏洩する危険性も高まります。特に、社員のPCから社内ネットワークを経由して他の社員のPCや会社全体のシステムを管理しているサーバに感染が広がると、会社の業務停止など甚大な被害につながります。これらの問題は、個人ユーザーにとっても企業にとっても大きな損失をもたらします。
不正なアプリインストールによる影響
USBメモリを管理していない場合、個人が持ち込んだUSBにより、個人利用は無料だが商業利用は有料となるソフトや個人購入したソフトを会社のPCにインストールしてしまうリスクがあります。これにより、ライセンスのないアプリを知らないうちに使用してしまい、損害賠償につながる可能性があります。また、これらの不要なアプリはPCの動作を遅くし、システムパフォーマンスを低下させます。さらに、海賊版アプリには悪意あるソフトウェアが含まれている場合があり、データ漏洩のリスクが高まります。
USBメモリ紛失時の対応手順
万が一USBメモリを紛失してしまった場合、迅速かつ適切な対応が被害を最小限に抑える鍵となります。以下の手順で対応しましょう。
初期対応:事実確認と捜索
紛失が判明したら、直ちに以下の事項を確認します。
・いつ、どこで紛失したのか
・USBメモリに保存されていたファイルは何か
・個人情報など機密性の高い情報は含まれていたか
・暗号化などのセキュリティ対策は施されていたか
利用者への聞き取り調査を通じて具体的な事実確認を行います。時間と場所が絞り込めたら、紛失した場所の管理者や警察に連絡し、該当する落とし物が届いていないか確認します。店舗などで紛失した場合、対応が早ければ発見できる可能性もあります。
関係者への報告と通知
USBメモリに個人情報や機密情報が含まれていた場合、速やかに関係者への連絡が必要です。取引先の情報や顧客の個人情報が保存されていた場合は、直ちに関係者に連絡し、謝罪しなければなりません。情報の内容によっては、監督官庁や警察への届け出、利害関係者への通知方法を検討します。BtoC企業の場合は、Webサイトや広報を通じた発表の検討も必要です。
被害拡大防止と再発防止策
初期対応に加え、被害の拡大防止と復旧のための措置を検討します。さらに再発防止に向けて根本的な事故発生原因の究明を進めていきます。情報漏洩による直接的・間接的被害を最小限に抑えることが対応の最大の目的です。
記録メディア全般におけるリスク
USBメモリ以外にも様々な記録メディアが存在し、それぞれに特有のリスクがあります。記録メディアは適切な管理が必要です。メディアごとに紛失リスクが異なるため、特徴を理解しておくことが重要です。ツールでの管理や社内ルールの整備により、メディアに付随するリスクを軽減できます。
| USBメモリ | 小 | ○ | PIN認証 パスワード | 高 |
| ポータブルHDD | 大~中 | ○ | パスワード | 低 |
| ポータブルSSD | 中~小 | ○ | 指紋認証 パスワード | 低~中 |
| SDカード | 小~極小 | × | × | 高 |
記録メディアには、USBメモリ、ポータブルHDD、ポータブルSSD、SDカードなどがあります。USBメモリは持ち運びやすくどのPCでも利用可能なため、便利な記録メディアとして広く使われています。ただし、サイズが小さいため紛失しやすく、重要なデータを運搬する際には注意が必要です。ポータブルHDDは大容量データの保存に適し、コストパフォーマンスに優れています。SDカードやマイクロSDカードは、小型軽量でデジタルカメラやスマートフォン、タブレットへの挿入が容易です。スマートフォンも記録メディアとして利用できます。多くのスマートフォンは大容量の内蔵ストレージを備えており、スマートフォンをPCに接続することでデータの取得やコピーが可能です。PCの近くにスマートフォンが置いてあっても注意されにくいのは、スマートフォンならではの特徴です。また、それぞれのメディアの中には、データを自動的に暗号化して保存するものや、指紋認証やパスワードなどのセキュリティ機能が付いているものもあります。
記録メディアを通じた情報窃取の手口
記録メディアを使った情報窃取の手法には、社員の不注意を利用した内部犯行や、外部からの悪意あるアクセスなど多岐にわたります。内部犯行では、信頼されている社員が業務上アクセス可能な機密情報をUSBメモリやスマートフォンにコピーし、持ち出すケースが見られます。特に多いタイミングとして、転職や退職前に顧客情報や製品情報を持ち出し、転職先や他社に提供するケースがあるといわれています。外部からのアクセスを狙う手口としては、社内で使用しているUSBメモリに見せかけた不正なUSBメモリをオフィスに送り込み、誰かが誤って接続することでウイルス感染を狙います。送り込む手口には、いくつかの手法があるといわれています。
・USBメモリを社員に手渡し、「会社周辺で拾った」や「エレベーターで拾った」などと誤認させる手法
・USBメモリをわざと社内や会社近辺に落としておき、拾った人が社内の人間が落としたものと誤認するよう誘導する手法
・懸賞の賞品などと偽って郵送で送り付ける手法
・展示会などの会場で景品としてUSBを手渡す手法
記録メディアの安全な管理方法
USBメモリなどの記録メディアを業務上使用せざるを得ない場合、細心の注意を払って管理する必要があります。まず、安全な保管場所を確保し、記録メディアの紛失を防ぐことが基本です。物理的対策だけでなく、データの暗号化や不要データの削除もセキュリティ強化の手段となります。また、IT資産管理ソフトを活用することでより安全に記録メディアを利用できます。これらの対策により、記録メディアの管理がより効果的となり、情報漏洩のリスクを大幅に低減できます。
企業における使用禁止の是非
企業のセキュリティポリシーでUSBメモリのような記録メディアを使用禁止とすることは、情報漏洩防止の観点から効果的です。しかし、使用禁止が業務効率に与える影響も無視できません。例えば、外出先でのデータ共有やプレゼンテーションなどの場面ではUSBメモリやポータブルHDDは依然として便利なツールです。企業のセキュリティポリシーにおける記録メディアの位置づけは、情報セキュリティと業務効率のバランスを見極めつつ、必要に応じた代替手段の検討が求められます。
効果的な記録メディアの管理方法
記録メディアを持ち運ぶ際には、蓋やチャックのあるカバンに入れたり、ストラップを付けて紛失を防ぎます。重要なデータを扱う場合は、鍵だけでなくGPSのついた頑丈なケースを使って運搬すると良いでしょう。また、置き忘れ防止装置の導入も有効です。置き忘れ防止装置とは、装置を取り付けた荷物と対になるスマホなどの装置が一定距離離れたときに通知する装置です。
記録メディアの管理方法として、USBポートを物理的にロックして使用を制限する方法がありますが、この手法にはいくつかの問題があります。まず、必要になった時に毎回解除する必要があります。頻度が高いと鍵の管理があいまいになることもあります。また、USBポートを物理ロックしても、他のメディアを読み込むCD・DVDドライブやSDカードリーダーも別に管理する必要があります。これらを一括で管理したい場合、物理的にポートをロックするよりもIT資産管理用のソフトウェアでまとめて管理する方が便利かつセキュリティを維持しやすいでしょう。
IT資産管理ソフトを使うことで、アクセス制御と利用ログの記録が可能になります。アクセス制御により、特定のUSBメモリ以外は利用を制限したり、特定のPCでしか記録メディアを利用できないように制御することで、認識していないメディアによるデータ持ち出しを防げます。また、使用履歴の取得と監視も有効です。ログを保持することで不正使用の早期発見につながり、ログを保存していることを公開することで情報持ち出しに対する抑止効果も期待できます。いざというときには、いつ、どのデータが持ち出されたのかを確認できるため、その後の対応判断に役立ちます。このように管理を行うことで、記録メディアの安全性を高め、リスクを最小限に抑えることが可能です。
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安全な利用方法とセキュリティ対策
記録メディアを安全に利用するには、データのパスワード保護と暗号化が重要です。紛失時にデータを第三者に悪用されないよう、暗号化ソフトウェアでデータを保護するとともに、推測されにくいパスワードを設定しましょう。さらに、使用時にはウイルススキャンを行うことも欠かせません。自動再生可能なUSBメモリはリスクが高いので、パソコンに接続した際は必ずウイルススキャンを実施し、ウイルス感染していないか確認する手順を習慣としましょう。また、利用終了後にはしっかりとデータを消去することで、記録メディアを紛失した時にも慌てる必要がなくなります。データ消去については、ファイルを単に削除するだけでなく、専用のソフトウェアで完全に消去することが推奨されます。これにより、もしメディアを第三者に拾われても復元されるリスクを最小限に抑えられます。
USBメモリ紛失に関するQ&A
Q1: USBメモリを紛失したらまず何をすべきですか?
A: 直ちに上司や情報システム部門に報告してください。いつ、どこで紛失したか、保存されていたデータの内容を確認し、紛失場所の管理者や警察に連絡します。個人情報が含まれている場合は、速やかに関係者への連絡と個人情報保護委員会への報告準備が必要です。
※個人情報保護委員会への報告には要件がありますのでご確認ください。
Q2: 暗号化されたUSBメモリなら紛失しても安全ですか?
A: 暗号化により第三者がデータを読み取るリスクは大幅に低減されますが、完全に安全とは言えません。パスワードの強度や暗号化方式によっては解読される可能性もあります。紛失が判明した時点で速やかに報告し、適切な対応を取る必要があります。
Q3: USBメモリの代わりに使える安全な方法はありますか?
A: クラウドストレージサービスやファイル共有システムの利用が推奨されます。これらのサービスはアクセスログが記録され、遠隔でのアクセス制御や権限管理が可能です。また、データの暗号化や多要素認証により、セキュリティレベルを高められます。
Q4: 個人所有のUSBメモリを業務で使用するのは問題ありますか?
A: 多くの企業で個人所有のUSBメモリの業務利用は禁止されています。管理外のデバイスはウイルス感染リスクやデータ持ち出しのリスクが高く、企業のセキュリティポリシーに反する可能性があります。業務で必要な場合は、会社が管理するセキュリティUSBメモリを使用してください。
Q5: USBメモリの紛失による損害賠償はどのくらいになりますか?
A: 損害賠償額は漏洩した情報の内容や被害の規模により大きく異なります。個人情報漏洩の場合、調査費用、通知費用、信用失墜による損失など、数千万円から数億円に及ぶケースもあります。予防策を講じることが最も重要です。
まとめ
記録メディアの管理は、情報漏洩やデータ破損を防ぐために重要です。特にUSBメモリは、利便性と持ち運びやすさから、知らないうちに情報が不正に持ち出される危険性があります。また、記録メディアを通じてデータが盗まれるだけでなく、マルウェアの感染により企業のシステム全体が影響を受けるリスクもあります。万が一USBメモリを紛失してしまった場合は、速やかに事実確認を行い、関係者への報告と適切な対応を取ることが被害を最小限に抑える鍵となります。企業では記録メディアの利用を慎重に検討し、必要に応じて適切な管理方法を導入することが求められます。利用ルールの制定や記録メディアの管理ツール導入などの適切なセキュリティ対策を施すことが、記録メディアの安全な利用には不可欠です。


