DevSecOpsとは?セキュリティを組み込む新しい開発手法を基礎から解説

DevSecOpsとは?セキュリティを組み込む新しい開発手法を基礎から解説
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近年、パスワード流出や個人情報漏洩のニュースが後を絶ちません。便利なネットサービスも、セキュリティに問題があれば私たちの生活に深刻な影響を与えます。多くの情報漏洩事件は、セキュリティ対策を後回しにしたことが原因です。スマートフォンを使い始める際、最初に指紋認証やパスコードを設定するように、システム開発でもセキュリティは「初期段階から」組み込む時代になりました。本記事では、安全なシステムを構築する考え方「DevSecOps(デブセックオプス)」と「セキュリティバイデザイン」について、専門知識がない方にも理解できるよう、身近な事例を交えて解説します。

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目次

セキュリティ対策が後回しになる理由

「動くものを先に作って、セキュリティは後で考えよう」——多くの開発現場で聞かれる言葉です。なぜこのような状況が生まれるのでしょうか。

よくある後回しの理由

セキュリティ対策は目に見えにくい性質があり、優先順位が下がりやすい傾向にあります。開発現場では納期との戦いが常にあり、「まず期限内に完成させなければ」という焦りから、セキュリティチェックが後回しにされがちです。また「今まで問題なかったから大丈夫」「小規模な事業だから標的にされない」といった認識の甘さも、対策を遅らせる要因となっています。

後回しが招いた失敗事例

ある通販サイト開発の事例を見てみましょう。開発チームは納期に追われ、商品表示や検索機能など目に見える部分を優先して完成させました。セキュリティ対策は「リリース直前に実施する」計画でしたが、リリース2週間前のチェックで重大な脆弱性が発覚。修正に3ヶ月を要し、リリース遅延による広告費の損失や競合への遅れという結果を招きました。この問題は、初期段階からセキュリティを考慮していれば防げたケースです。

ユーザーへの影響

セキュリティ対策の遅れは、サービス利用者に直接的な被害をもたらします。クレジットカード情報の流出、個人情報の漏洩、なりすまし被害、サービスの突然の停止——これらは全て、後回しにされたセキュリティ対策が引き起こした事例です。

変化する業界の認識

最近では「セキュリティは設計段階から考えるべき」という認識が広がっています。スマートフォンを購入した際、最初に求められるのはパスコード設定や指紋認証の登録です。これと同様に、システム開発でも「初期段階からセキュリティを組み込む」手法が注目されています。次の章では、この考え方を具体化する方法について説明します。

セキュリティバイデザインとは

新しいスマートフォンを使い始める時、アプリのインストールや壁紙の設定より先に、必ずセキュリティの初期設定を行います。パスコード設定、指紋認証登録、Face ID設定——これらを完了しないと次の画面に進めない仕組みです。なぜでしょうか。それは「セキュリティは後からでは遅い」という設計思想に基づいているためです。

セキュリティバイデザインの定義

セキュリティバイデザインとは、システムや製品の企画・設計段階からセキュリティ対策を組み込み、情報セキュリティを確保する考え方です。内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は「情報セキュリティを企画・設計段階から確保するための方策」と定義しており、デジタル庁も「政府情報システムにおけるセキュリティ・バイ・デザインガイドライン」を発行しています。これらの動きから、システム開発や調達においてセキュリティバイデザインがいかに重要かがわかります。

スマートフォンに見る実例

アプリをインストールする際、「このアプリは以下の機能へのアクセスを要求しています」という画面を見たことがあるでしょう。カメラ、位置情報、連絡先などの権限確認です。これもセキュリティバイデザインの一例で、使用前に権限を確認し、必要な機能だけを許可し、いつでも設定を変更できる仕組みになっています。

なぜ初期段階からの対策が必要なのか

スマートフォンの開発を例に考えてみましょう。

後からセキュリティを追加する場合:
1. スマートフォンを製造
2. 完成後にセキュリティ機能を追加
3. 指紋認証センサーの設置場所がない
4. 画面設計の見直しが必要
5. 大幅な手戻りが発生

初期段階からセキュリティを考慮する場合:
1. 設計時に指紋認証の位置を決定
2. 必要なセンサーを組み込んで製造
3. 自然な形で認証機能を実装
4. スムーズな開発を実現

このように、「後付け」ではなく「設計段階から」、「必要に迫られて」ではなく「標準機能として」セキュリティを考える姿勢が、セキュリティバイデザインの本質です。では、これを実際の開発現場でどう実現するのでしょうか。次の章で説明する「DevSecOps」が、その答えとなります。

セキュリティバイデザイン

DevSecOpsとは何か

前章でセキュリティバイデザインについて説明しました。ここからは、それを実現する具体的な手法である「DevSecOps(デブセックオプス)」について解説します。

DevSecOpsの3要素

DevSecOpsは、開発(Development)、セキュリティ(Security)、運用(Operations)の3要素を統合して進める手法です。システム開発は、プログラムを作って終わりではなく、運用フェーズまで含めた継続的な取り組みが必要です。また近年のセキュリティ事案を見ても、セキュリティを考慮した開発が不可欠となっています。

従来の開発が抱える問題

従来の開発では、開発チーム、セキュリティチーム、運用チームが独立して作業を進めていました。その結果、以下のような非効率が生じていました。

開発チーム:「便利な決済機能を完成させました」
セキュリティチーム:「しかしセキュリティ上の問題があります」
運用チーム:「この仕様では管理が困難です」
結果:作り直しの繰り返しで、コストと時間を浪費

DevSecOpsによる改善

DevSecOpsでは、3つのチームが初期段階から協力します。開発チームは使いやすい機能を提案し、セキュリティチームは不正アクセス対策を事前に組み込み、運用チームは監視方法を確認する——この連携により、安全で使いやすいサービスを迅速に完成できます。

DevSecOps

家づくりで理解するDevSecOps

DevSecOpsという言葉は聞き慣れないかもしれませんが、家の建築に例えると理解しやすくなります。

従来の家づくり

1. 家を建築
2. 完成後に防犯カメラを設置
3. 窓の配置が悪く死角ができた
4. センサーライトの設置場所がない
5. 追加工事が必要に

DevSecOpsの家づくり

設計段階:
死角のない窓配置、防犯カメラの設置場所確保、センサーライトの配線計画

建築中:
図面通りの進行確認、新しい防犯技術への対応検討、周辺環境変化への対応

完成後:
定期的な防犯設備点検、新しいセキュリティ機器の導入、居住者の使い勝手確認

家づくりの例からわかるように、運用やセキュリティを考慮せずに建築すると、後々大きな問題が生じます。事前に対策しておくことで、住み始めてからも使い勝手が良く、安全な家が実現できるのです。

DevSecOpsの実践例

「初期段階からセキュリティを考える」とは、実際の開発現場でどう変わるのでしょうか。フリマアプリの開発を例に見ていきます。

従来の開発手順

Step1:機能開発
商品出品機能、購入手続き、メッセージ機能、決済システム

Step2:デザイン調整
商品一覧の表示、検索機能、画面デザイン

Step3:セキュリティチェック
ここで問題発覚——個人情報が容易に閲覧可能、不正ログインを防げない

結果:
設計からやり直し、リリースが3ヶ月遅延、開発コストが2倍に

DevSecOpsの開発手順

Step1:企画・設計段階
機能とセキュリティを同時に検討します。例えば、商品出品機能に対して投稿者の本人確認方法、画像の個人情報チェック、不適切商品の自動検知を組み込みます。

Step2:開発中
プログラムコードの自動チェックツールを活用し、問題を即座に修正しながら開発を進めます。

Step3:テスト段階
セキュリティテスト、負荷テスト、ユーザビリティテストを同時進行し、小さな問題を早期発見します。

結果:
予定通りのリリース、高い安全性、最小限の手戻り

機能別の比較

1. ユーザー登録
従来:機能を作成後、セキュリティ対策を追加
DevSecOps:初期段階から本人確認、なりすまし対策、不正登録防止を実装

2. 商品出品
従来:写真投稿機能作成後、個人情報チェック追加
DevSecOps:画像の自動スクリーニング、位置情報の自動削除、禁止商品の自動検知を組み込み

3. メッセージ機能
従来:チャット機能作成後、フィルター追加
DevSecOps:暗号化通信の標準実装、不適切表現の自動検知、なりすまし対策を組み込み

開発体制の変化

従来:開発チーム → セキュリティチーム → 運用チーム(バトンリレー方式)

DevSecOps:開発チーム ⇄ セキュリティチーム ⇄ 運用チーム(連携方式)

上流から下流へ流れる従来の方式ではなく、常にチーム間で連携しながら作業を進めます。

ユーザーにとってのメリット

ユーザーにとっては、個人情報漏洩や不正利用のリスクが低減し、安心してアプリを使えるようになります。開発遅延が起こりにくいため、便利な新機能を早く利用できます。また不具合の早期発見・修正により、安定したサービスが提供されます。

DevSecOpsの導入により開発の手戻りが減少し、セキュリティ品質が向上し、サービスの信頼性が高まります。結果として、私たちユーザーが安心して使いやすいサービスを迅速に利用できるようになるのです。

私たちの生活への影響

DevSecOpsとセキュリティバイデザインは、私たちの日常生活にどのような影響をもたらすのでしょうか。

スマートフォンアプリ、ネットショッピング、オンラインバンキングなど、日常的に使うデジタルサービスは、開発段階から安全性が組み込まれることで、より安心して利用できるようになっています。アプリの新機能リリース時も、セキュリティチェックが自動的に行われるため、個人情報漏洩リスクを最小限に抑えられます。

サービス開発者は、ユーザーの声に素早く対応し、セキュリティ問題にも迅速に対処できるようになりました。これらの取り組みは目には見えにくいものの、デジタル社会の信頼性向上に大きく貢献しています。電子マネー決済やオンライン診療といった新しいサービスも、セキュリティが確保されているからこそ安心して利用できるのです。

このように、DevSecOpsとセキュリティバイデザインの考え方は、私たちが日常的に使うデジタルサービスの安全性を支える重要な基盤となっており、より便利で安全なデジタル社会の実現に貢献しています。

よくある質問(Q&A)

Q1. DevSecOpsと従来の開発手法の最も大きな違いは何ですか?

A. 最も大きな違いは、セキュリティを考慮するタイミングです。従来の開発では、機能を完成させた後にセキュリティチェックを行うため、問題が見つかると大幅な手戻りが発生します。DevSecOpsでは、企画・設計段階からセキュリティを組み込むため、効率的に安全なシステムを開発できます。

Q2. DevSecOpsを導入するには、大規模な組織でなければ難しいですか?

A. いいえ、組織の規模に関わらず導入可能です。大切なのは「初期段階からセキュリティを考える」という意識です。小規模な開発チームでも、自動チェックツールの活用や、開発プロセスにセキュリティレビューを組み込むことで、DevSecOpsの考え方を実践できます。

Q3. DevSecOpsを導入すると、開発期間は長くなりませんか?

A. 逆に、トータルの開発期間は短縮される傾向にあります。初期段階でセキュリティを考慮することで、後からの大幅な修正が不要になるためです。また自動化ツールの活用により、セキュリティチェックの効率も向上します。

Q4. セキュリティバイデザインとDevSecOpsの関係は?

A. セキュリティバイデザインは「設計段階からセキュリティを組み込む」という考え方で、DevSecOpsはそれを実現するための具体的な開発手法です。セキュリティバイデザインという理念を、DevSecOpsという実践方法で具現化すると理解するとわかりやすいでしょう。

Q5. DevSecOpsを導入するために、まず何から始めればよいですか?

A. まずは開発チーム、セキュリティ担当者、運用担当者が定期的にコミュニケーションを取る仕組みを作ることから始めましょう。また、コードの自動チェックツールの導入や、セキュリティレビューを開発プロセスに組み込むことも有効です。小さな改善から始めて、徐々に範囲を広げていくことをお勧めします。

まとめ

「早期対策」がこれからのセキュリティの基本です。スマートフォン購入時にすぐパスコードを設定するように、システム開発でも「後付け」ではなく「初期段階から」セキュリティを組み込む時代になりました。

ユーザーにとって、DevSecOpsやセキュリティバイデザインの普及は良いニュースです。より安全なサービスを、待たされることなく利用できるようになります。新機能リリースの度にセキュリティチェックで数週間待たされる状況が減り、安全性が確認された機能を迅速に利用できます。

企業にとっても、開発の手戻りが減り、信頼されるサービスを効率的に提供できるメリットがあります。セキュリティ事故による信頼失墜や対応コストを考えれば、初期段階からセキュリティに投資する方が賢明な選択といえます。

今後、AIやIoTの発展により、私たちの生活はますますデジタル化が進みます。その中で、DevSecOpsやセキュリティバイデザインの考え方は、より重要性を増していくでしょう。

利用者も、プライバシーポリシーのわかりやすさや二段階認証の有無など、セキュリティを重視しているかどうかを意識してサービスを選ぶことが大切です。安全なデジタル社会は、開発者と利用者がともに意識を高めることで実現します。本コラムで紹介したDevSecOpsとセキュリティバイデザインの普及が、その大きな一歩となることを願っています。

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