APT攻撃とは?攻撃の手法と必要な対策について解説

APT攻撃とは?攻撃の手法と必要な対策について解説
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APT攻撃(Advanced Persistent Threat:高度で持続的な脅威)は、特定の組織を標的として長期間にわたり執拗に行われるサイバー攻撃です。近年、日本でも政府機関や大手企業が被害に遭い、深刻な情報漏洩事件が発生しています。本コラムでは、APT攻撃の定義から具体的な攻撃手法、実際の被害事例、そして組織が講じるべき対策までを詳しく解説します。

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目次

APT攻撃の意味と特徴

APT攻撃とは、Advanced Persistent Threat(高度で持続的な脅威)の略称で、「高度な(Advanced)」「持続的な(Persistent)」「脅威(Threat)」という3つの要素が組み合わさった標的型サイバー攻撃です。通常のサイバー攻撃とは異なり、特定の組織や企業を狙い、巧妙な技術を用いて長期間にわたり攻撃を継続します。

APT攻撃の主な目的は、標的となる組織や企業に長期間アクセスし続けることであり、情報を盗み出すだけでなく、場合によっては不正に操作を行ったり作業を妨害したりすることも含まれています。この際、攻撃者は非常に執拗かつ戦略的に行動し、通常のセキュリティ手段では検知しにくい手法を駆使して、目的を達するまでの間、持続的に攻撃を維持します。

APT攻撃の特徴として、高度な技術を要することに加えて、ターゲットを詳細に調査し、その組織の内部情報を深く理解しながら効果的に侵入を試みる点が挙げられます。このため、APT攻撃は強大な資源を持つハッカー集団が関与しているとされており、対策には従来のセキュリティ手段に加えて、より高度な防御策が必要とされています。

標的型攻撃との違い

APT攻撃と標的型攻撃は、どちらも特定のターゲットを狙った攻撃ですが、その目的や手法には違いがあります。
APT攻撃は前述のとおり、長期間にわたり執拗に行われるという特徴を持ちますが、標的型攻撃は短期的な利益を目的とし、特定のデータや資産を素早く奪取するために実行されることが多く、単発で行われることが一般的です。
APT攻撃はその持続性と組織的な戦略であることから標的型攻撃よりも複雑であり、国家間のサイバー戦争や産業スパイ活動として利用されることも少なくありません。

APT攻撃の主な手法

初期侵入

APT攻撃における初期侵入は、攻撃者が標的となる組織に最初の足場を築くための重要なフェーズです。
主に、フィッシングメールが用いられるケースが多く、攻撃者は巧妙に偽装したメールを使用して、従業員に悪意のあるリンクや添付ファイルを開くよう誘導します。この手法では、標的の心理や行動パターンを緻密に分析し、関心を引く内容や緊急性を装うことでクリックを促します。
また、ゼロデイ攻撃が行われることもあります。これは、ソフトウェアやシステムの未修正の脆弱性を突く方法で、標的が使用している特定のソフトウェアに対する深い知識を持つ攻撃者が有利に進めることができます。このような攻撃は、予測が難しく迅速な対応が求められるため、被害が広範囲に及ぶリスクを伴います。
他にも、サプライチェーン攻撃が用いられる場合があります。これは、攻撃者が標的組織のサプライヤーやパートナー企業を経由して、間接的に攻撃を行う戦術です。こうした経路を通じて侵入した場合、被害が表面化するまでに時間がかかることが多く、被害の特定や原因究明が困難を極めることがあります。
このように、初期侵入の手法は多岐にわたり、巧妙化が進んでいるため、組織にとっては一層の注意と対策が必要とされます。

情報収集と拡散

APT攻撃における情報収集と拡散のフェーズは、攻撃者が標的となる組織内の重要な情報を慎重に収集し、それを外部へと流出させることとなります。情報収集は初期侵入が成功した後に行われ、攻撃者は組織のネットワークに潜伏しながら、機密情報や知的財産へのアクセスを試みます。この段階では、攻撃者は内部ネットワークのマップを作成し、どのサーバーやデータベースが最も価値があるかを識別します。
情報収集後は、それをどのようにして外部へ拡散するかが次の課題となります。

APT攻撃者は、トラフィックが監視されにくい方法を選択し、さらに不正なデータ転送を隠すために暗号化技術を駆使します。また、場合によって攻撃者はデータを小分けにし、時間をかけて少しずつ転送することで、監視を欺くこともあります。
さらに、情報拡散においては従来のネットワークプロトコルを利用した隠密な通信手段が用いられることが多く、これにより通常のネットワーク活動に紛れて不正なデータ転送が見過ごされるリスクがあります。
このようにしてAPT攻撃は、組織のセキュリティを突破し、重要情報を外部に漏洩させることとなります。

持続的なアクセス維持

APT攻撃における持続的なアクセス維持は、攻撃者が標的となるネットワークやシステムに長期間にわたり浸透し続けるための重要なフェーズです。
ここでは、攻撃者が一度アクセス権を得た後、その状態を維持するためにさまざまな手法を駆使します。例えば、攻撃者はバックドアやトロイの木馬をあらかじめ仕込むことによって、攻撃が発覚した際に初期侵入経路が閉じられるリスクに備えます。これにより、外部からのアクセスが途絶えたとしても内部の権限を保持し続けることが可能となります。
さらに、攻撃者はアクセス権保持のために正規ユーザーの認証情報を盗んだり、権限昇格を行うことがあります。これらの手法を用いることで、攻撃者はネットワーク内での移動が簡単になり、機密情報にアクセスする機会を増やし続けます。特に、正規の権限を持ったユーザーのアカウントを使用すれば、セキュリティ監視の目を逃れやすくなります。加えて、攻撃者はシステムの脆弱性を突いて自らの痕跡を隠したり、ログを改ざんすることで発覚を遅らせることもあります。このようなテクニックが、攻撃者の意図する目的達成に至るまでの時間を確保するための鍵となっています。

APT攻撃の事例紹介

Operation Aurora

この攻撃は2010年に明るみに出たもので、Googleをはじめとする数十の企業がターゲットにされました。攻撃者はインターネットエクスプローラーの脆弱性を悪用し、企業の機密情報に不正アクセスを試みました。この事例は、APT攻撃の破壊力を世間に強く印象付けたと言えるでしょう。

Stuxnet

Stuxnetというマルウェアを用いたケースですが、これは国家レベルでのサイバー戦と見られ、特にイランの核施設を標的にした攻撃として有名です。この攻撃は産業制御システムに直接影響を与え、特定の機械操作を無効化するという高度な手法を取ったことで、APT攻撃の進化を示すものとして注目されました。

APT1

米国のMandiant社が報告したもので、中国の人民解放軍に関連するグループが実施したとされています。APT1は製造業、IT、金融など様々な業種にわたり、企業の機密情報を長期間にわたって盗み出す手法を取ったことから、高い持続性と巧妙さを兼ね備えていることが特徴です。


これらの事例からAPT攻撃がいかに組織的かつ戦略的であるかがわかると思います。こうした攻撃に対しては、どれだけ技術的な防御策を取っていても攻撃を100%防ぎきることは困難です。そのため、攻撃を受けてもその被害をどう最小限に抑えるかについて日ごろから検討しておくことが重要です。

企業・組織が被った影響

APT攻撃が企業や組織に与える影響は多岐にわたりますが、特に顕著なのは経済的損失と信頼の失墜です。企業はしばしば、精緻な攻撃にさらされることで、機密情報や知的財産の流出という直接的な被害を受けます。これにより、競合他社に機密が漏れることがあり、業界内での競争力が大幅に低下します。さらに、情報漏洩が公に知られると顧客やパートナーからの信頼が揺らぎ、企業のブランド価値に深刻な影響を与えます。
また、APT攻撃による内部システムへの侵入は、システムのダウンタイムや業務の停滞を招きます。システムの復旧やセキュリティ対策の強化には多大な時間と費用がかかり、これが長引くと企業運営に重大な支障をきたしかねません。ビジネスモデルそのものが狙われることもあり、新製品の開発計画や戦略が攻撃者によって盗まれるリスクも存在します。

APT攻撃に対する効果的な対策

セキュリティ対策の基本

防御の多層化

セキュリティ対策の基本としてまず考慮すべきは、APT攻撃に対する防御の多層化です。具体的には、ネットワークの監視システムを強化し、異常なトラフィックや不審な活動を速やかに察知する能力が求められます。

脆弱性管理

次に、システムやソフトウェアの脆弱性管理が不可欠です。APT攻撃は既知の脆弱性やゼロデイ脆弱性を突いて侵入するため、定期的なセキュリティパッチの適用に加え、脆弱性診断を実施し、リスクの高い脆弱性から優先的に対処する必要があります。

アクセス制限

また、データ暗号化やアクセス制限を行うことにより、万が一侵入を許してしまった場合でも被害を最小限に抑えられます。
さらに、権限管理を適切に行い、必要最低限のアクセス権のみをユーザーに付与することで、内部からの攻撃リスクを軽減することができます。

ログ監視と異常検知の実装

APT攻撃は長期間潜伏するため、ネットワークやシステムのログを継続的に監視し、異常なアクティビティを早期に検知することが重要です。SIEM(Security Information and Event Management)ツールを活用することで、複数のシステムからのログを一元管理し、攻撃の兆候を見逃さない体制を構築できます。

インシデント対応計画の重要性

インシデント対応計画は、APT攻撃に対する防御を強化する上で不可欠です。APT攻撃は、高度な持続的脅威を伴うため、事前に計画された対応策がなければ、被害を最小限に抑えることは困難です。
具体例を挙げると、攻撃が発生した際の迅速な対応として、被害範囲の特定や影響の封じ込め、復旧プロセスの実施などが求められます。また、インシデント対応計画は、攻撃の予兆を早期に発見し、早急な対応を可能にするためのプロセスを提供します。これには、異常な活動を検知するための監視体制の整備や、組織内のコミュニケーションの確立が含まれます。さらに、定期的な訓練とシミュレーションを通じて、計画の実効性を維持し、関係者が各自の役割を明確に理解していることを確認することが重要です。これにより、万が一の際にも計画通りに迅速かつ効果的に対応し、被害を最小限に抑えることが可能となります。

従業員教育と意識向上

APT攻撃に対する対策として欠かせない要素の一つが従業員教育とその意識向上です。
攻撃者はしばしば人間の心理的な弱点を突く手法を用いるため、単に技術的な対策だけでは不十分です。従業員全員がサイバーセキュリティの基本を理解し、日常的な業務においても意識を高めていることが重要です。 具体的には、フィッシングメールなどの不審なメッセージに対する警戒心を持つことや、定期的にパスワードを変更する習慣を身につけることが挙げられます。
また、会社全体で情報セキュリティに関する研修を実施することや、実際の攻撃シナリオを模した訓練を行うことも効果的です。これにより、従業員は攻撃に対する感度を高め、疑わしい事象を早期に報告する体制を整えることができます。従業員の意識が変われば、企業全体のセキュリティリスクを大幅に低減させることが可能です。

まとめ

APT攻撃は年々巧妙化しており、国家背景を持つ攻撃グループだけでなく、一般の犯罪組織でも高度な攻撃ツールを入手できる状況となっています。企業や組織は、単一の対策では防げないことを前提に、入口対策・内部対策・出口対策の多層防御を実装することが求められます。

また、技術的な対策に加えて、従業員一人ひとりがセキュリティ意識を持ち、不審なメールやリンクに注意を払うことも重要です。定期的な訓練とインシデント対応計画の策定により、万が一攻撃を受けた場合でも被害を最小限に抑えることができます。

APT攻撃から組織を守るためには、最新の脅威情報を継続的に収集し、防御策を常に見直す姿勢が不可欠です。

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